今日(4月3日)のNHK日曜討論は、各党の党首が出演し、見ごたえのあるものでした。

改憲がテーマになったところで、日本共産党の志位和夫委員長が、自民党の「日本国憲法改正草案」(以下、「改憲草案」)そのものが参院選の一大争点となる、と指摘し、この中の問題点の一つに、人権抑制原理が「公共の福祉」から「公益及び公の秩序」に変わっていることをあげました。
それに対して自民党副総裁の高村正彦氏は、この変化は、「ただ分かりやすくしただけ」と強弁しました。

この答えは、ごまかしです。
しかも、自民党の改憲草案の前近代性、危険性をごまかすごまかしです。
私は、自民党の改憲草案は「憲法」という名前はついていても、近代立憲主義の風上にも置けず、憲法と言える代物ではないと考えていますが、その一つが、この人権規定にあります。

憲法が一番大事にすべき人権は何によって制約されるか──現在の日本国憲法の場合

憲法とは、国民の権利(と自由)を守るために国家権力を縛ることに存在意義がありますから、国民の権利は最大限に尊重されます。
だからといってこれは、無限定でありません。
「(国民の権利を)国民は、これを濫用してはならない」(第12条)のです。

しかしそうは言っても、憲法そのものの中心命題は国民の権利を守ることです。

「一番大事な国民の権利を、何をもって制約するか」──憲法のあり方にかかわる根本的な悩みどころですが、日本国憲法は、この問いに対する答えを、「公共の福祉」というキーワードで与えました。
「(人権は)常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」(第12条)「公共の福祉に反しない限り(人権は)最大限の尊重を必要とする」(第13条)という形でです。

ただ、「公共の福祉」というだけでは分かりづらいかもしれません。
しかし、安心してください。
ちゃんと定着した憲法解釈があります。

それは、「人権相互がぶつかる際には制約しよう」というものです。
人権と人権が相互にぶつかることがある。
そのことをちゃんと考えて人権を利用する責任がある(12条)とか、人権相互のぶつかりがない限り国政上最大限の尊重が必要(13条)という意味です。
人権を制約するものは人権以外にない──という意味で、「内在的制約」と言われています。
国政上イッチバン大事な人権を制約するんだから、人権以外に制約原理はないっていう話で、とってもスジが通っていると思います。

憲法が一番大事にすべきはずの人権が、それ以外のモノサシで制約されてしまう──自民党の改憲草案の場合

ところが自民党の改憲草案では、国民の権利を制約するキーワードを「公益及び公の秩序」に変えてしまっています。

なぜこう変えたのか。
高村氏は「分かりやすくしただけだ」といったわけですが、自民党改憲草案の「Q&A」には別のことも書かれています。
かいつまんで言うと、
「人権相互の衝突の場合」にだけ人権が制約される「公共の福祉」という言葉を変えて、「公益及び公の秩序」とすれば、「憲法によって保障される基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないこと」が明確になる──というのです。

「…に限られるものではない」

「公共の福祉」で制約されてきたこれまでの人権制約原理に限らない「人権の制約」が可能となる、ということです。

「分かりやすくした」だけじゃなくて、人権制約の範囲がひろがってますよ、高村さん。

注意したいのは、この危険性は、人権制約の範囲拡大だけではない、ということです。
憲法にとって一番大事な「人権」が、人権以外のモノサシで──「公益」とか「公の秩序」とか、人権の外のものによって制約することが可能になる、ところに、危険性があります。

このモノサシがふさわしいかどうかっていうことも問われていますが、それ以上に、人権制約原理に異物を持ち込む危険性を感じます。
国政上イッチバン大事なはずの人権を、それ以上の何らかの価値によって制約する──これは憲法のあり方の根幹にかかわる大問題であり、そんなことが許されれば立憲主義の伝統から外れてしまいます。

事実、自民党のみなさんは、立憲主義の伝統を受け継ぐつもりはないんだろうな、と思う節があります。
「現行憲法の(人権)規定の中には、西洋の天賦人権説に基づいて規定さてていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました」(自民党改憲草案Q&A)
「天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です」(自民党の片山さつき議員)
私が「前近代的な改憲草案」と思うのも、無理はないでしょ?

これでよく、人権の価値観を共有する「価値観外交」などと言えるな…とあきれ果てます。

なお、憲法学者の辻村みよ子さんが言っていることも紹介します。
精神的自由の大事な柱である表現の自由を、国益や集団の利益で制約している先輩がある、それは中国だ、とし、「表面的には、公益を理由に権利の制限ができるとする日本の自民党改正草案とも軌を一にするものといえよう」(『比較のなかの改憲論──日本国憲法の位置』)と言っています。

憲法の全条項の完全実施をめざして

私は、日本国憲法の条文のなかで、第13条「すべて国民は個人として尊重される」がとても大好きです。
そして、政治生活の一番の基準はここにあると思っています。

日本共産党は、現行憲法の全条項を守り、完全に実施することを日本改革の中心課題に置いています。
個人が大事にされ、人間が尊重され、「真に平等で自由な共同社会」を実現することを長期的なビジョンにしています。

自民党の改憲草案が骨抜きにしようとしている一つが、13条を軸にする人権思想です。
安倍政権と自民・公明によって、憲法が危機に直面し、人権と立憲主義を受け継いできた人類の進歩を逆行させるような暴走がはじまっているいま、広範な人々と手をつなぎ、憲法をまもるために頑張りぬく決意です。